衣類の素材によって、しみの種類によって

染み抜き一口にしみ抜きといっても、魔法の薬があって衣類を新品にしてくれるというものではありません。衣類の素材によって、しみの原因によって、しみの経時変化によって、布地の染めの種類や強弱によってなどといろいろなことを計算しながら汚れを落として行くことになります。
クリーニング店では経験や勉強をつみながらしみ抜きをしてゆくのですが、残念ながらすべてのしみが取れるというものではありません。
色々なしみ抜きの手法を試しながらも素材が台無しになりそうなときには「これ以上無理はできません」と申し上げることもあります。

血液のシミ抜き

しみの種類別にしみ抜きの仕方を少しお話して見ます。まずは血液。しみ抜きの勉強でたいてい最初に出てきます。大変よく出会うしみでありながら対処の仕方によっては簡単に抜けます。対処を間違うととても難しいしみにもなってしまいますのでみなさんも覚えておいていただくといいと思います。
血液の特徴は「たんぱく質が多く含まれている」ということです。たんぱく質は高温にする、長い時間を置くなどで変化を起こし水に溶けなくなります。ちょうど生卵のしろみが水に溶けるけれど、温度をかけてゆで卵にすると水に溶けなくなるのと同じです。
血液がついたら温度をかけない、時間をかけないことが大事。ワイシャツなど水洗いできる商品に付いた血液は冷水で洗っただけで簡単に取れてしまいます。水洗いできない商品に付いた血液はクリーニング店にお任せください。その部分だけ水を使ってやさしくしみぬきし、あとはドライクリーニングします。
しかし、血液が変化して黒くなってしまったりしたらすでに簡単には抜けなくなっています。淡白分解酵素や漂白剤を使うこととなりますが、商品の染色が弱いものの場合、この段階で色なきがおこることがあり「染色が弱くて染み抜きできません」とご報告申し上げることとなります。

化粧品のシミ

化粧品のしみについてお話します。口紅やファンデーションは水に溶けません。無理して水で洗うとあとで取れなくなってしまうことがあります。まず最初に油性のしみ抜きをすることが肝心です。これはご家庭ではなかなか難しいのですが、クリーニング店では油性のしみ抜きの設備がありますので比較的容易に抜いてくれることと思います。しかし、口紅はどんどん進化していてなかには難しいものも出てきているようです。マニキュアのしみは気をつけないとアセテート繊維の衣料に付いた場合、繊維が溶けてしまいます。マニキュアの場合に限らずアセテート繊維は油性の染み抜き処理に弱い繊維ですので注意が必要です。場合によっては「繊維が傷むのでしみ抜きできません」となる可能性もあります。

絵の具のシミ

これがまた多種多様に及んでいて難しいです。水性絵の具といっても乾くと耐水性ポリマーなるものが働いて水に溶けなくなってしまうもの、アクリル系の水彩絵の具(最近の水彩絵の具にはこれが多いような気がします)なんかは乾くと取れにくくなってしまいます。ペンキも水性耐水性(乾くと耐水性になってしまう水性ペンキ)や油性ペンキ。いろんな種類があって私もその場になってあれこれとテストしながらのしみ抜きとなります。お客様は「ペンキだから」とおっしゃいますし、あまりむずかしいことを申し上げても仕方ないのですが、結構苦労します。

まだまだしみ抜きにはいろいろな手法がありますが、一般のお客様に難しい薬品の名前を提示しても意味のない話ですし、プロの方には「釈迦に説法」となってしまいますのでここらでおしまいにします。