見出し画像

キアヌリーブスが映画でロングコートを翻してから、しばらくたちます。
そう、「マトリクス」です。
弾丸を避けるシーンでは、「そんなのありか!」って驚愕を覚えた記憶があります。
おそろしく斬新なシーンでした。

コホン……。
それはさておき
あれ以来、ロングコートが冬のスマートさを表現する重要なアイテムとして君臨するようになりました。

ロングコートにもいろいろあります。
チェスターコート、モッズコート、ダッフルコートetc
そのロングコートの一翼を担うトレンチコート
名前の由来を皆さんはご存知でしょうか。
もちろん、トレンチというくらいですから、その由来は多くの方がご存知だろうとは思うのですが、話のついでですので、知らないふりをしてお付き合いください。

トレンチというのは塹壕のことです。
つまり第1次世界大戦の当時、イギリス陸軍が塹壕の中で、悪天候に耐えるために着た物がトレンチコートと呼ばれました。
だから、もともとはヘビーデューティーなものだったんですね。
製造元は、かのバーバリーとアクアスキュータムだったそうです。

さらに私の好みで言うと、第二次大戦のドイツ軍のコートは、映画などで見る限りとても御洒落だった思います。
立てエリで黒いブーツなんか履いて。
その出生が、敗戦国ドイツであったことから悪いイメージも伴いますが、ドイツのファッション自体はお洒落だったと思いますよ。
コートに罪はありません。

軍用のヘビーデューティーなコートというと、海軍ではピーコートが思い浮かびます。
私も学生時代に、ピーコートを着ていた記憶があります。
アメリカ海軍御用達のSchott社製のピーコートというのがありまして、学生にしては不相応なものを神戸三宮で買ったのです。
しかも172センチの私に合うサイズは、悲しいことにボーイズサイズでした。
まだ大人扱いされていないような気がして、なんだか少しだけ心が傷みました。

そのピーコートはメルトンという、ウールを密にして作った生地が使われていて、かなり重かったです。
ウールで織った生地を石鹸水で煮込むなどして、無理やり縮ませ、風を一ミリも通さないようにします。
だから防風に優れ、重く、高価になるという特性を持ったメルトンなのです。
私は学生時代にこれを着て、六甲おろしの吹きすさぶ小道を、大学へ通った思い出があります。シックスフッターズのマフラーにブーツ。
それは当時流行したメンズクラブの受け売りでありました。

またしても話は変わります。
先日、私の経営するクリーニング店にバーバリーのチェスターコートが持ち込まれました。

画像1

キャメル色のお洒落なロングコートです。
ウールがたっぷり使ってあっていかにも重厚感があります。
トレンチコートの正統がバーバリーであり、素材はギャバジンかウールであったことを考えると、このコートはまさに王道なのでしょう。
もったいなくて塹壕には入れませんが。

実際、しっかりと重みがあって、品質表示にはカシミア100%と誇らしく記載がありました。
しかし、クリーニングにとってはこれが難題なのです。
風を通さないということは、乾燥が遅くなるという事。
むらなく綺麗に乾燥させるのに、時間と根気が必要になります。
温度をかけて無理に乾燥させると、型くずれや縮みの原因になりますからね。
お客様の大事なお召し物は、大事に扱わないといけません。

今年も、極寒の冬に大活躍してくれたお洒落なロングコート。
そろそろ、おしまいになる時期です。
安くはないし、みなさんこだわりをお持ちのコート。

ただし、そのまましまってはいけません。

エリやソデに残った皮脂汚れは黄色に変色します。

すそに知らないうちに付いた汚れがシミを作ります。

そういった汚れが原因になって、虫食いやカビになります。

大事にクリーニングと保管をして、次の冬に備えましょう。