茶色い変色の染み抜き依頼がありました。
染み抜きについては、お客様の気になさるところだろうと思います。
クリーニング師の試験には染み抜きの試験もあり、ある程度の技術はどこのクリーニング店さんでもお持ちです。
さらに、業界の研修会というものもあり、私も若い頃から染み抜き講習会に出させていただきました。
ということで、代表的なシミの抜き方は、大方分かっているつもりです。
今回は茶色に変色してしまったシミの依頼がありました。
茶色のシミの多くは、有機の食物、あるいは液体が付着し、時間の経過とともに茶色に浮き出てきたものです。
表面に付いただけのものなら、簡単に落とせるのですが、変色に至ったものは時間も経過していて、しっかり繊維にしみついています。
ですから、漂白剤や蛋白分解酵素などを使わなければならず、簡単には取れません。
さらに、漂白剤を使う場合は、衣類の地色を侵してしまう恐れもあるため、注意が必要です。
今回ご依頼いただいたのは、男性物の夏用ジャケット。
繊維の構成は、麻とポリエステルの混紡です。麻は濡れるとキワどりができやすいので、この点も注意が必要となります。
袖に、食べこぼしと思われる茶色の変色が点々と見られます。
染み抜き剤を付けて、蒸気で温度を上げてゆきます。
焦らないようにゆっくりと時間をかけて、反応させます。
すると温度で染み抜き剤が溶け、酸化漂白をはじめます。
水でゆすいで、キワにならないようコンプレッサーを使った空気圧で急速乾燥させると出来上がり。
すっかりわからなくなりました。
この程度の染み抜きなら、無料で行います。
しかし、業者としては、手間がかかるのであまり引き受けたくはない。ですから、お客様もシミを付けないようにしてくださいね。
自分で染み抜きをできるかというご質問をよく受けます。
超音波洗浄機などは、小型のものが家電量販店でも売っているようです。
しかし、蒸気を使った染み抜き機械は、一般には売られていません。当店でも、染み抜き機械のほかに、コンプレッサーや数百万円の蒸気ボイラーなどが装備されています。
こういった設備や、技術者の経験が必要な染み抜きは、一般家庭ではできないと思われます。
染み抜きと一口に言っても色々な染み抜き材や技術があり、そのシミや衣類の繊維によって使い分けるので容易ではありません。
お客様が挑戦して、失敗されると悲しいので、企業秘密ということにしておいてください。